苔星の丘で
本当はいつも流星の分身が空に降っているのです。
地上は眩し過ぎるため、ふつう夜でも見ることはほとんどできません。
その星はそれぞれが思う美しい横顔の形で燃えています。
幾つもの同一の横顔は、幾つもの君の横顔、今日の、明後日の、百日前の、一分後の。
振り向いた横顔の数だけ、滝のような天の川が作れるほどの密度です。
その息は、酸素になっているのです。こちらの息を整えるために。
私の信じていることは、世の中でそれぐらいなのです。
ところで水の宇宙を知っていますか。苔の星を持っている水の宇宙を。
どれくらい広いのだろう。火口のふもとの草原に、それはあります。
まだ行ったことはないけれど、それが次に私が信じれるものかもしれません。
苔星の丘でなら、あの横顔に出会えるかもしれません。
先日、星が流れているだろう空の下、回る馬達を見ました。
夜であたりは暗く、他に何もありそうにありませんでした。少し小高い場所だったかもしれません。そこに着くまでゆっくりと傾斜を登る感覚があった気がします。深夜、どこかの丘で。
赤と白のテント屋根の下で、装飾的な馬具を着けられた駁毛の馬の群れ。そのどこかしこに電飾が付いていて暗闇で眩しく輝いていました。
真ん中の大きな柱の周りを、馬達は数えるのも飽きるほど休むことなく回っていました。
駁毛の白と同じくらい白い少女や老婆が、馬には乗っていました。
白かったもので、おばけかと思いましたが、向こうの景色は透けていませんでした。
違う、おばけじゃない。永遠に周り続けるのだから。
同じ道、同じ天井、同じ横顔、同じ乗り物、同じ道。おいで、ピーターパン。
子供のままの、生きた体で。
目が覚めても朝日を暗く感じるほどに電飾は眩しいままでした。
朝日のまだ向こうにある流星を頼りに、私は丘を下りて行くしかありませんでした。